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メディアの中の直弼

小説、映画、漫画……幕末は壮大な歴史ロマンの舞台として、今も多くのファンを魅了し続けています。その時代の登場人物として井伊直弼は欠かせません。国を開いた英傑か、はたまた、大粛清を行った悪の親玉か。それぞれの作品の中で、幕末の大老はどのように描かれているのでしょうか?

TVドラマ

大奥
放送局
フジテレビ
放送日
2003年6月3日〜8月19日
脚本
浅野妙子 / 十川誠志 / 冨岡淳広
キャスト
菅野美穂 / 浅野ゆう子 / 池脇千鶴 / 安達祐実 / 野際陽子 / 他

フジテレビ系列でこれまで5作が製作、放映された同名のテレビドラマシリーズ第3作目。21世紀になってから最初に製作された『大奥』でもある。20時台の火曜時代劇枠で放映された。全11話+明治篇(総集編)。
13代将軍・徳川家定から江戸城無血開城までの幕末の時代、天璋院篤子(菅野美穂)と和宮(安達祐実)を中心として、表の政治からは離れた大奥で繰り広げられる女たちの愛憎劇を描く。
直弼は第三話、四話にゲスト出演的に登場する。史実とは異なり、大奥は表の政治とは切り離されて描かれているため、直接ストーリーに関わることはないが、その執政が大奥にも強烈な影響力を及ぼしている。直弼の言動一つが大奥の体制を揺るがす場面が幾度か確認できる。あまり画面には映らないが、そのぶん、演じた窪田弘和の存在感ある演技が引き立っている。

翔ぶが如く
放送局
NHK
放送日
1990年1月7日〜12月9日
脚本
小山内美江子
キャスト
西田敏行 / 鹿賀丈史 / 加山雄三 / 高橋英樹 / 佐藤浩市 / 田中裕子 / 賀来千香子 他

NHK大河ドラマ28作目。維新の立役者であり、幼馴染でもある西郷隆盛と大久保利通を軸に、幕末から維新後までの激動を描く。司馬遼太郎による同名の小説が原作だが、原作にはない幕末編が加えられ、やがて袂を別つ二人のドラマに深みが加えられた。
直弼は第一部の第八回から十四回にかけて登場する。いち早く世界に目を向けていた薩摩藩を疎ましく感じており、正面からの衝突を繰り返していた。早口で他大名を圧倒し、伝統と格式ばかりに捕われ、反対派の暗殺も辞さない大老を、神山繁が好演している。

新選組!
放送局
NHK
放送日
2004年1月11日〜12月12日
脚本
三谷幸喜
キャスト
香取慎吾 / 山本耕史 / 藤原竜也 / 江口洋介 / 石黒賢 / 石坂浩二 / 中村獅童 他

NHK大河ドラマ43作目。新選組の局長として活躍した近藤勇を主軸に、幕末の動乱に生きた人々の人間模様を描いた。これまで、様々なメディアで取り上げられた新選組のイメージを刷新することを意図に、タイトルには「!」が取り入れられている。
劇中に直弼は登場しないが、第4回「天地ひっくりかえる」の放送では桜田門外の変が平和な時代の終焉を告げる象徴としてテーマとされた。また、その回放送後の名所案内コーナー「新選組を行く」では、当時、江戸にいた後の新選組副長の土方歳三が、思い半ばにして無念の死を遂げた井伊大老を消えゆく雪になぞらえて詠んだ句「ふりながら 消ゆる雪あり 上巳こそ」が紹介された。

漫画

SIDOOH-士道
著者
高橋ツトム
連載
『週刊ヤングジャンプ』2005年〜連載中(2008年10月現在)
書籍
ヤングジャンプコミックス『SIDOOH-士道 1〜14巻(以下続刊)』集英社 680円

安政の大地震や流行り病といった天災が続く幕末。細部に史実を含ませながら、動乱を駆け抜けていく少年達の姿を描く。コロリで母を亡くした雪村翔太郎と源太郎の兄弟は、「強くなければ生きていけない」という強い信念の下、本当の侍になることを目標に旅立つ。倒幕と佐幕のはざまに揺れ動き、出会いと別れを繰り返しながら、強さとは何か、士道とは何かを学び成長していく。

序章を終え、本編の始まる合図であるかのように桜田門外の変が描かれる。大老・井伊直弼の暗殺は、様々な思惑が絡む時代と主人公達が動乱の日本へ走り出す始まりであった。
俯瞰した視点から墨絵のような描き方で、1ページに収められた桜田門外襲撃の様子は真に迫っている(単行本3巻収録)。

陽だまりの樹
著者
手塚治虫
連載
『ビッグコミック』1981年4月25日号〜1986年12月25日号
書籍
小学館文庫「陽だまりの樹 全8巻」小学館 610円
手塚治虫漫画全集「陽だまりの樹 全11巻」講談社 591円〜

関東小藩の下級武士・伊武谷万二郎と町医者・手塚良庵の二人を主人公に、動乱の幕末から明治時代の始まりまでを描いた巨編。1981年から1986年まで「ビッグコミック(小学館)」誌上で連載された。
生真面目で無骨な武士である万二郎は、ある日、老中・阿部正弘の登用を受け、アメリカ総領事ハリスとその通詞ヒュースケンの世話役に抜擢される。一方、外科医である良庵は西洋医術を学ぶため大坂の適塾に入門し、様々な交流の中で医学の近代化を学んでいた。二人の周りには、勝海舟や緒方洪庵、橋本左内、福沢諭吉、西郷隆盛など歴史に名を刻む人物が集まり、やがて二人とも時代の流れに翻弄されていく——。
2000年にアニメ化され日本テレビ系列で放映された。全25話。

井伊直弼は西洋嫌いで独裁政治を目論む野心家として物語の中盤に登場する。
残念ながら、直弼は良いイメージでは描かれていないが、幕末という時代の空気を感じることができるコミックである。

お〜い!竜馬
著者
原作: 武田鉄矢 / 画: 小山ゆう
連載
『週刊ヤングサンデー』1986年〜1996年
書籍
ヤングサンデーコミックス 『お〜い!竜馬 全23巻』小学館(現在絶版)
ヤングサンデーコミックス ワイド版 全14巻 小学館 710円
小学館文庫 全14巻 650円

日本の近代化の基礎を形作った坂本龍馬の一生を、フィクションを交えながら壮大に描いた伝記的作品。古い身分制度に苦しめられてきた下級武士たちから、やがて倒幕につながる熱いうねりに日本中が飲み込まれていく。
史実では、井伊直弼と龍馬の接点は確認されていないが、直弼の為政は間接的に影響を与えていた。作中では、直弼の政治ぶりは他を許さない過激なものだったが、それを討ったのが僅か18人の浪士であったことが、尊王攘夷運動に出遅れていた土佐藩郷士らの決意に火をつけた原因であったと描写されている。

小説

花の生涯 新装版(上)
著者
舟橋聖一
出版社
祥伝社
発行年
2007年4月(初版は1953年)
ISBN
ISBN978-4-396-33351-5
定価
780円(税込)

三十五万石彦根藩主の子ではあるが、十四番目の末子(ばっし)だった井伊直弼は、我が身を埋れ木に擬し、住まいも「埋木舎」と称していた。「政治嫌い」を標榜しつつも、一大の才子長野主膳との親交を通して、曇りのない目で時代を見据えていた。しかし、絶世の美女たか女との出会い、それに思いがけず井伊家を継ぎ、幕府の要職に就くや、直弼の運命は急転していった……。

井伊直弼と彼をとりまく人物たちの視点から描かれる幕末。1953年に発行されてからNHK大河ドラマ第1作目をはじめ、幾度も映画化・テレビドラマ化された長編歴史小説の新装版。

花の生涯 新装版(下)
著者
舟橋聖一
出版社
祥伝社
発行年
2007年4月(初版は1953年)
ISBN
ISBN978-4-396-33352-2
定価
780円(税込)

なぜ、広い世界に目を向けようとしないのか? ——米国総領事ハリスの嘆きは、同時に井伊直弼の嘆きでもあった。もはや世界の趨勢を止めることはできない。徒らに攘夷を叫ぶことは、日本国自体を滅亡させることだった……。腹心長野主膳、それに直弼の密偵として、また生涯を賭して愛を捧げたたか女を配し、維新前夜に生きた直弼の波瀾の生涯を描く。

井伊直弼と彼をとりまく人物たちの視点から描かれる幕末。1953年に発行されてからNHK大河ドラマ第1作目をはじめ、幾度も映画化・テレビドラマ化された長編歴史小説の新装版。

奸婦にあらず
著者
諸田玲子
出版社
日本経済新聞社
発行年
2006年11月
ISBN
ISBN978-4532170738
定価
1,995円(税込)

「うちは若君はんのためだけに生きとおす」 身分違いの一途な恋情を内に秘め、彼女は大老の「影」となった。幕末を生きた忍びの女の激しく数奇な生涯を描く。

井伊直弼もとで奔走した村山たか女の視点を中心に、直弼や長野主膳を取り巻いた幕末の動乱を描く。直弼の埋木舎時代から、藩主・大老時代、桜田門外の変のその後までを、深く掘り下げた長編歴史小説。

幕末
著者
司馬遼太郎
出版社
文芸春秋
発行年
2001年9月(初版は1963年12月)
ISBN
ISBN978-4167105938
定価
700円(税込)

「歴史はときに、血を欲した」。明治維新前夜、日本には殺す者と殺される者がいた。桜田門外の変から始まる新時代への動乱の中、実際に起こった12の「暗殺」を主題に、作者の歴史観を織り交ぜた連作短編小説。

冒頭に収録された「桜田門外の変」は、唯一の薩摩藩士として襲撃に加わり、直弼の首級をあげた有村治左衛門の人柄や恋模様を下地として、当時の様子を浮き彫りに描いている。作中で、直弼は、徳川家威信回復のためだけに強権を奮い、国家を混乱させた病的なまでの保守主義者であり、暗殺されることが最も重要な歴史的役割だったと評価されている。

あきんど—絹屋半兵衛— 上
著者
幸田真音
出版社
新潮社
発行年
2006年3月
ISBN
ISBN978-4101217246
定価
700円(税込)

江戸時代、京で流行る染付磁器は当時の最先端産業だった。その中でも一番の物を彦根で作りたいと、ゼロから起業した男がいた。「湖東焼」を創始した実在の商人・絹屋半兵衛とその妻・留津の、家も町も、藩すらも巻き込んだ新しい挑戦を描く経済歴史小説。
物語は、桜田門外の変が伝えられた彦根城下町から始まる。井伊直弼は絹屋半兵衛と「湖東焼」にとって、ただの藩主ではなかった。それより数十年前、町人とも気さくに接していた若き日の直弼との邂逅が、後の半兵衛の人生に大きな影響を持つ様子が描かれている(文庫化にあたり「藍色のベンチャー」改題)。

あきんど—絹屋半兵衛— 下
著者
幸田真音
出版社
新潮社
発行年
2006年3月
ISBN
ISBN978-4101217253
定価
700円(税込)

半兵衛が作り上げた「湖東焼」の窯は、藩に召し上げられることになった。築き上げてきた全てを手放さざるをえない状況で、半兵衛の目指していたものはこれからの「湖東焼」が広げていく世界だった。時代の荒波に翻弄される幕末のベンチャー・ビジネスを描く。 「湖東焼」を愛した直弼は、藩主となってからも手厚くそれを保護した。埋木舎で厭世的だった頃から、突然の世子となり、揺れ動く世の中に翻弄されながら藩主、大老へと責務を果たしていく姿が、「湖東焼」の隆盛と併せて語られている。

井伊大老暗殺—水戸浪士 金子孫二郎の軌跡
著者
童門冬二
出版社
光人社
発行年
1999年2月
ISBN
ISBN978-4769808930
定価
1,785円(税込)

桜田門外の変は大老暗殺が最後の目標ではなかった。襲撃を企てた水戸浪士たちのリーダーであった金子孫二郎を主題に、組織と個人の論理が絡み合い、やがて維新実現の起爆剤となった事件を、斬新な視点から解かり易く再考する。
人生の半分を学問に費やした直弼については「学者的」で「部下からナマイキなことを言われるのが大きらい」な気質でタテ社会のつながりを重視した人物だったと分析されている。その暗殺は、決して私憤によるものばかりでなく、政治的な意味を持っていたことが述べられている。

萩大老
著者
早瀬詠一郎
出版社
新潮社
発行年
2000年2月
ISBN
ISBN978-4104352012
定価
1700円(税込)

藩主の直弼に呼び寄せられ、江戸の井伊家上屋敷を訪れた彦根藩お抱えの能大夫・喜多文十郎とその息子・七之助。久方ぶりに謁見した藩主は歌と茶と能をこよなく愛し、「神の宿る声」を響かせていたかつての様子とはどこか違っていた……。
真っ直ぐに己の道を歩もうとするあまり、埋木舎時代にあった心の余裕を亡くしてしまった直弼が描かれている。表題にある萩は「萩の寺」として知られる彦根の天寧寺にちなんだもので、そこにまつわる悲しい歴史が直弼の行く末とオーバーラップする。

「メディアの中の直弼」は順次更新予定です。お楽しみに。

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